- NVIDIAがAppleを抜きTSMCの最大顧客へ浮上、AI時代の覇権が鮮明に
2026年1月、半導体業界の勢力図を象徴する出来事が報じられました。AIチップの爆発的な需要を背景に、NVIDIAが長年TSMCの最大顧客であったAppleを追い抜き、売上貢献度で首位に立ちました。これは、テクノロジー業界の主役が「スマートフォン」から「AIコンピューティング」へと完全に移行したことを意味します。TSMCの魏哲家(C.C. Wei)CEOは、AI需要について「本物であり、始まったばかりだ」と述べ、今後5年間でサーバーAIプロセッサの売上が年平均50%成長すると予測しています。TSMCはAI需要に対応するため、2026年の設備投資額を過去最高の380億ドルから420億ドル規模に引き上げる計画であり、特に2nmプロセスやCoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)などの先進パッケージング技術への投資を加速させています。一方で、NVIDIAのジェンセン・ファンCEOは、TSMCの製造能力に対する依存度が極めて高いことを認めつつも、供給不足の解消に向けてサプライチェーン全体での能力増強を求めています。この動きは、Appleがこれまで享受してきた最優先顧客としての価格交渉力や供給優先権に影響を与える可能性があり、TSMCは「AI」と「スマホ」という2つの巨大な成長エンジンを持つことで、価格決定力をさらに強固なものにしています。 - メモリ市場が「スーパーサイクル」に突入、2028年までの供給不足と価格高騰
DRAMおよびNANDフラッシュメモリの市場は、AIデータセンターからの強烈な需要に牽引され、かつてない「スーパーサイクル」に突入しました。MicronやSKハイニックス、Samsungなどの主要メーカーは、AI向けのHBM(広帯域メモリ)やエンタープライズSSDの生産を優先しており、その結果、PCやスマートフォン向けの汎用メモリ供給が圧迫されています。Micronは、この供給不足が少なくとも2028年まで続くと警告しており、DRAM価格は2026年第1四半期だけで最大50%上昇するとの予測も出ています。この影響は広範囲に及び、Samsungは消費者向けSSDやDRAMの価格を倍増させる計画が報じられたほか、中国のスマートフォンメーカーXiaomiやOPPOはメモリコストの高騰を理由に2026年の出荷目標を削減せざるを得ない状況に追い込まれています。さらに、Samsungの販売代理店が価格を80%引き上げたとの報告もあり、この「チップフレーション」は最終製品の価格転嫁を通じて、一般消費者の購買力にも深刻な影響を与え始めています。 - 米国と台湾が歴史的な関税協定で合意、TSMCを中心とする巨額投資が条件
米国と台湾は、半導体産業のサプライチェーンを強化するための新たな貿易協定に合意しました。この協定の核心は「台湾モデル」と呼ばれ、米国が台湾製半導体に対する関税を従来の20%から15%に引き下げる代わりに、TSMCを含む台湾企業が米国内で総額2500億ドル(約40兆円)規模の製造投資を行うというものです。この合意は、トランプ政権が掲げる製造業回帰政策と、台湾の地政学的安全保障のニーズが一致した結果です。具体的には、TSMCはアリゾナ州での工場建設を加速させ、さらに5つの工場を追加して合計で10棟以上の巨大ファブ群を構築する構想も報じられています。これにより、米国は最先端半導体の国内生産能力を確保し、台湾は米国市場へのアクセスと政治的な後ろ盾を得ることになります。しかし、台湾国内では、最先端技術と優秀な人材が米国に流出することによる「産業空洞化」への懸念も高まっており、経済的な利益と国家安全保障のバランスをどう取るかが今後の課題となっています。 - HBM4開発競争が激化、SKハイニックスとSamsungが次世代メモリの覇権争い
AIチップの性能を左右する次世代メモリ「HBM4」を巡る開発競争が、SKハイニックスとSamsungの間で激化しています。現在、HBM市場で主導権を握るSKハイニックスは、NVIDIAの次世代GPU向けにHBM4の約3分の2を供給する見込みであり、16層積層技術(16-Hi)などの先端技術で他社をリードしています。一方、Samsungは巻き返しを図るため、2026年初頭の量産開始を目指し、最新の1cナノメートルDRAM生産能力の大部分をHBM4に割り当てるという賭けに出ました。Samsungは「カスタムHBM」戦略を掲げ、顧客の要望に応じてロジックダイをカスタマイズする技術を導入し、TSMCやNVIDIAとの連携を強化しています。また、MicronもHBM市場でのシェア拡大を狙っており、シンガポールや米国での設備投資を加速させています。HBM4は、AIモデルの学習効率と推論速度を劇的に向上させる鍵となるため、この競争の勝者が次世代のAI半導体市場を制すると言っても過言ではありません。 - 中国の半導体国産化が加速、米国規制下で「脱NVIDIA」と自給自足が進展
米国の輸出規制が強化される中、中国は半導体産業の自立を猛烈なスピードで進めています。中国国内の半導体製造装置の現地生産比率は、2025年の目標であった35%を既に突破しており、NAURAやAMECといった国内メーカーが急速に技術力を高めています。また、AIチップ分野では、HuaweiやAlibaba(T-Head)、BaiduなどがNVIDIA製品の代替となる国産チップの開発と量産を加速させており、HuaweiのAscendシリーズなどは既にNVIDIAのシェアを奪いつつあります。さらに、中国政府は「中国版マンハッタン計画」とも呼ばれる国家プロジェクトを極秘裏に始動させ、EUV露光技術やHBMの国産化に向けた研究開発に巨額の資金を投じています。米国がNVIDIAの最新チップ「H200」の輸出を一部承認する動きも見られますが、中国は「技術的デカップリング」を前提とした独自のサプライチェーン構築に邁進しており、2026年には国内自給率が大幅に向上すると予測されています。 - Micronが世界的生産体制を拡張、シンガポール・インド・米国で同時多発的に投資
米国のメモリ大手Micronは、AI需要の爆発的増加に対応するため、世界各地で生産能力の大規模な拡張を行っています。シンガポールでは240億ドルを投じて最先端のNANDフラッシュメモリ工場を着工し、2028年の稼働を目指しています。インドのグジャラート州では、後工程(パッケージングとテスト)の工場が商業生産を開始し、アジアにおける供給拠点を多様化させています。さらに、本国米国ではニューヨーク州に最大4つの製造棟を持つメガファブの建設に着手し、アイダホ州の本社工場と合わせて国内生産能力を飛躍的に高める計画です。Micronはまた、台湾のPSMC(力積電)の工場を買収する動きも見せており、新規建設よりも迅速にDRAMの生産能力を確保しようとしています。これらの動きは、地政学的リスクの分散と、AIおよびデータセンター市場におけるシェア拡大を同時に狙った野心的なグローバル戦略です。 - 日本のRapidusと光電融合技術が世界から注目、次世代エコシステムのハブへ
日本の次世代半導体メーカーRapidus(ラピダス)は、2027年の2nmチップ量産に向けた準備を着々と進めています。北海道での工場建設に加え、AIサーバーの国産化を目指す鴻海(Foxconn)やシャープとの連携、さらにはNVIDIAとのGPU設計・製造における協力関係も報じられています。また、日本が強みを持つ「光電融合(IOWN/CPO)」技術にも注目が集まっており、NTTやソニー、京セラなどが開発を加速させています。光電融合は、データセンターの消費電力を劇的に削減(NVIDIA試算で7割減)できる技術として期待されており、Rapidusの半導体と組み合わせることで、日本が次世代のAIインフラにおける重要なプレイヤーとなる可能性があります。政府もこの動きを全面的に支援しており、JX金属などの素材メーカーもRapidusへの投資や供給を計画するなど、オールジャパンでのエコシステム構築が進んでいます。 - Intelの苦境と戦略転換、製造部門の分離とパッケージングへの注力
かつての半導体王者Intelは、2025年第4四半期決算で約6億ドルの純損失を計上するなど、厳しい経営状況が続いています。パット・ゲルシンガーCEOの下で進めてきたファウンドリ事業の再建は道半ばであり、最先端プロセス「18A」の立ち上げに社運を賭けています。一方で、同社は製造ノードの拡大ペースを一部減速させ、需要が急増している「先進パッケージング」技術や、UMCなどへの技術ライセンス供与に戦略の軸足を移しつつあります。また、NVIDIAが2028年のチップ生産の一部をIntelに委託するとの報道もあり、これが実現すればIntelの製造部門にとっては大きな転機となります。しかし、肝いりの「AI PC」戦略がメモリ供給不足の煽りを受けるなど、完全な復活にはまだ多くの課題が残されています。 - 次世代技術「ガラス基板」と「CPO」の実用化競争が本格化
半導体の性能向上において、微細化の限界を突破するための次世代技術として「ガラス基板」と「CPO(Co-Packaged Optics)」への注目が急速に高まっています。ガラス基板は、従来の有機基板に比べて平坦性や耐熱性に優れ、より微細な回路形成や大型パッケージが可能になるため、Intel、Samsung、SKハイニックス、そして中国のBOEなどが開発と量産準備を急いでいます。一方、CPOは電気信号を光信号に変換してチップ間を接続する技術で、データ転送速度の向上と消費電力の低減を実現します。台湾のサプライチェーンや日本の素材・装置メーカー(キヤノン、タツモなど)もこれらの新技術に対応した製品開発を進めており、2026年はこれらの技術が研究室から量産ラインへと移行する重要な年になると見られています。 - トランプ政権の関税政策が韓国・台湾企業に圧力、サプライチェーンの再編を強制
米国のトランプ政権(または次期政権の影響)による保護主義的な通商政策が、世界の半導体企業に重くのしかかっています。特に「米国への投資を行わない企業には100%の関税を課す」という警告は、SamsungやSKハイニックスといった韓国のメモリメーカーにとって大きな脅威となっています。米国は、AIチップやメモリの製造拠点を米国内に誘致することで、経済安全保障と雇用創出を図ろうとしています。これに対し、韓国政府や企業は対応に苦慮しており、対米投資の拡大や現地生産比率の引き上げを余儀なくされています。また、台湾も関税協定を通じて米国との結びつきを強める一方で、中国市場とのデカップリングを進める必要に迫られており、政治的な圧力が企業の投資判断やサプライチェーンの配置を決定づける主要因となっています。
2026年1月の半導体ニュースまとめ
