半導体ニュース 20251222

主要ニュース

1. 台湾政府、TSMC米国展開に対し「N-2」ルールを再確認
   TSMCの米国進出が安全保障上の議論を呼ぶ中、台湾政府は「N-2」ルールの維持を再確認しました。これは、海外で製造する技術は台湾国内の最先端技術より少なくとも2世代遅れたものでなければならないという規定です。米国の製造要請に応えつつ、台湾の「シリコンシールド」としての戦略的優位性を保護し、核心技術の流出を防ぐためのバランスを取る姿勢が示されています。
2. 経産省、ロボット向け国産AI開発に1兆円規模の支援へ
   経済産業省は、ロボット向けの国産AI開発を促進するため、1兆円規模の支援を行う方針です。ソフトバンクなどが関与する新会社構想も報じられており、単なるソフトウェア開発にとどまらず、ヒト型ロボットなどの「フィジカルAI」を製造現場やサービス産業へ実装することを目指しています。労働力不足の解消と産業競争力の強化を狙った大規模な国家プロジェクトです。
3. 米国、中国ハイテク企業への新たな投資規制を導入
   米国政府は、中国のハイテク企業に対する新たな投資規制に乗り出しています。これは半導体やAI、量子コンピューティングなどの重要技術分野において、米国の資本が中国の軍事力強化や技術的躍進に利用されることを防ぐ狙いがあります。技術輸出規制に加え、金融面でも「デカップリング（切り離し）」を進める動きであり、米中間の経済・技術的な分断がさらに深まる懸念があります。
4. クアルコム製PC向け半導体、人気ゲームの9割に対応し攻勢
   クアルコムがPC向け半導体市場での攻勢を強めており、同社のチップを搭載したPCが人気ゲームの約9割に対応したと報じられました。従来、ArmベースのWindows PCは互換性が課題でしたが、これを克服しつつあります。消費電力性能に優れた「AI PC」の普及を加速させ、IntelやAMDが支配的だった市場構造に変化をもたらす可能性があります。
5. OpenAIとOracleの「スターゲート」、ミシガンで電力・環境摩擦
   OpenAIとOracleが計画する巨大データセンタープロジェクト「スターゲート」が、米国ミシガン州で電力供給と環境問題を巡る対立を引き起こしています。AIモデルの学習と運用には莫大な電力が必要ですが、地域グリッドへの負荷や環境への影響が懸念されています。AIインフラの物理的な拡張が、エネルギー資源の制約という現実的な壁に直面していることを象徴する事例です。
6. 中国半導体企業のIPOラッシュ、粤芯半導体などが資金調達へ
   中国では半導体企業のIPO（新規株式公開）の動きが活発化しています。12インチウェーハの量産を行う粤芯半導体（CanSemi）は創業板への上場が受理され、約75億元の資金調達を目指しています。また、芯和半導体もIPO指導を完了しました。米国の制裁下でも、中国国内の資本市場を活用して資金を確保し、製造能力の拡張と技術自立を進めようとする強い意欲が見られます。
7. 再エネ・原発活用のデータセンターに2100億円補助
   日本政府は、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源を100%活用するデータセンターの整備に対し、2100億円規模の補助を行う方針です。AI普及に伴う電力消費の急増に対応しつつ、カーボンニュートラル目標を達成するため、電力インフラと計算基盤をセットで強化する狙いがあります。世界的なデータセンター誘致競争において、安定したクリーン電源をアピール材料にします。
8. TSMC熊本工場への1.2兆円補助金、地経学的にプラスと評価
   TSMCの熊本工場に対する日本政府の約1兆2000億円の補助金について、地経学的な観点からプラスであるとの分析がなされました。巨額の財政支出ですが、台湾有事などのリスクに備え、不可欠なロジック半導体の供給拠点を国内に確保することは、経済安全保障上のコストとして正当化されるという見方です。また、関連産業への波及効果や技術基盤の底上げも期待されています。
9. 中国GPUのBiren、8.9億米ドルの損失も香港IPOを目指す
   中国のGPUメーカーであるBiren Technologyは、約8億9000万米ドルの損失を抱えながらも、香港市場でのIPOによる上場を目指しています。同社はNvidiaに対抗しうる高性能AIチップの開発を目指していますが、米国の制裁リスト入りにより製造委託先が制限されるなどの逆風に直面しています。上場による資金調達は、生き残りと研究開発継続のための重要な生命線となります。
10. 「フィジカルAI」への注目高まる、製造業やインフラ整備が鍵
    AI技術のトレンドとして、デジタル空間だけでなく物理的なロボットや機器を制御する「フィジカルAI」への注目が高まっています。製造業での活用が進む中、この分野への投資選別が重要視されています。また、韓国ではフィジカルAI大国を目指すために、通信基地局などのインフラ整備から始めるべきだという提言もなされており、産業界全体でAIの物理的実装へのシフトが進んでいます。

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